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石川県白山市の女性産婦人科医 いこまともみ です。
今回は 無痛分娩のリスクについてお話ししたいと思います。
JALA(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)の報告によると、2023年の無痛分娩率は、全国13.8%、東京31.2%、石川県7.7% でした。
2017年の全国5.2%から、6年間で2倍に増加しています。
今後も増加が予想される無痛分娩ですが、様々なリスクがあります。
今回のブログは情報量が多く、内容も難しいので、途中で読むのをあきらめても構いません。
院長としては、無痛分娩はリスクがこんなにあるんだと感じてもらえれば、それでよいのです。
全国の無痛分娩を提供している病院やクリニックは、これだけのリスクがあることを承知のうえで、妊婦さんの希望に応えています。
無痛分娩における医師と助産師の労力は、自然分娩とでは比べ物になりません。
リスクを最小限に抑え、かつ安心安全な無痛分娩を提供したいと日々勉強し、技術を磨いていることをぜひ知っておいていただきたいと思います。
無痛分娩を希望される妊婦さんは、リスクがあっても無痛で産みたいという方です。
『リスクはわかる。でも、私は無痛がしたい。その方が頑張れるんだ。』
『自然分娩とて、リスクはゼロではないのだから、だったら痛みがない方がいい。無痛が1番の希望。』
無痛分娩はそんな妊婦さんのためのものです。
このブログにたどり着いた方は、無痛分娩が気になっている方だと思います。
そして、パッと見てリスクこんなにあるんだったら、自然分娩にしようかなと思った方、
本当に迷っていて、リスクをしっかり理解して選びたい方、
すでに無痛と決めているから、リスクを見ても決意が揺るがない方、様々いらっしゃると思います。
分娩法に正解はありません。
自然分娩、無痛分娩、帝王切開の3つの分娩法があり、それを選べる時代が来ました。
結婚式は人生の一大イベントですが、終わってしまえば通過点にすぎず、その後の結婚生活の方がはるかに重要ですよね。
お産も同じです。通過点にすぎません。その後の子育ての方がはるかに長くて重要です。
それを思えば、分娩方法はたいした問題ではありません。産んだだけで皆、立派!
それでは無痛分娩のリスクを説明いたしましょう。
リスクをきちんと理解したい方は、しっかり読んでくださいね。
すでに無痛分娩と決めていて、リスクを知るのは怖くて見れない方は、ここでおしまいです。
院長はそれでよいと思います。無痛分娩と決めた、あなたの意思を尊重します。
まず前提として、無痛分娩は陣痛促進剤の使用と吸引分娩がセットだと思った方がいいかもしれません。
自然分娩に比べて、その発生率は明らかに高くなります。
それを踏まえて、リスクは以下の通りです。
①かゆみ(発生率50%)
麻酔薬は痛みをとってくれる一方でかゆみがでるものなので我慢しましょう。
②発熱(発生率20%)
いまだに原因不明ですが、無痛分娩では38℃以上の発熱が起きるとされています。
③回旋異常が増える
発生率は自然分娩の3~4倍。赤ちゃんの進行経路に異常が発生する。これが起きると無痛分娩でも痛みがとれない。緊急帝王切開または吸引分娩が必要になる。
④陣痛が弱くなる
そのため80%の確率で陣痛促進剤が必要になる。
⑤子宮が破裂する(発生率1%以下・2008~20017年全国で1件・死産)
自然分娩でも稀に起きるが、陣痛促進剤を使用すると発生率が高くなる。日本で赤ちゃんの死亡例あり。
⑥いきむ力が弱くなる
麻酔の影響で足に力が入らずいきめない。 ほぼ全例で発生。
⑦吸引分娩が増える(発生率20-50% ちなみに自然分娩では5-16%)
麻酔の影響で足に力が入らずいきめないので、吸引して引っ張り出す必要がある。
⑧吸引分娩により赤ちゃんに頭血腫や帽状腱膜下血種ができることがある
産瘤とは違います。実際に無痛分娩で吸引分娩になり帽状腱膜下血種で赤ちゃんが死亡した事例があります。
発生率:頭血腫は自然分娩では1-2%ですが、吸引分娩では6%に増えます。帽状腱膜下血種は自然分娩でも吸引分娩でも1%以下。
⑨吸引分娩により赤ちゃんが黄疸になり治療が必要になる(発生率20-40%)
治療が必要となるため、赤ちゃんの退院が伸びます。
⑩産後の出血が増える
止まらないと大きな病院に搬送となります。搬送が必要になるのは0.4%ほどです。(2008~20017年全国で1件・母体死亡)
⑪分娩時の陰部の傷が深くなる。
吸引により会陰裂傷が起きやすく、肛門まで切れることがある。産後の傷の痛みは自然分娩よりも痛い。
⑫産後に尿がでない
導尿して治療することになります。1年以上治らないこと。重篤なものは1%以下。
⑬硬膜穿刺後頭痛が起きる(発生率0.67~1%)
頭痛がひどくてベットから起きられない。1週間ほど寝たきりになる。
⑭鎮痛不成功(発生率1.5~10%)
そもそも無痛分娩の麻酔が効かなかった例。
⑮局所麻酔中毒(発生率1%以下)
日本での死亡例あり。重篤な場合は生命の危険あり。
⑯高位くも膜下誤入(発生率1%以下)
重篤な場合は生命の危険あり。
⑰全脊椎くも膜下麻酔(発生率1%以下)
日本での死亡例あり。(全国の2008~20017年で4件) 呼吸停止します。重篤な場合は生命の危険あり。
⑱下肢の神経麻痺(発生率1%以下)
リハビリが必要になります。
⑲脳脊髄障害(発生率1人/17~30万人)
硬膜外麻酔の時に細菌が脊髄に入り、感染を起こして後遺症が出ることです。