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石川県白山市の女性産婦人科医 いこまともみ です。
今回は難産についてお話ししたいと思います。
安産は誰しもが望むものですが、実はいい難産もあるのです。
初産婦さんで30時間以上、経産婦さんで15時間以上の分娩は、遷延分娩(せんえんぶんべん)と呼ばれ、難産の部類に入ります。
まる1日経っても産まれないと本人はもちろん、付き添う家族もクタクタになり、とても不安になります。
しかしここで心折れずに耐えられるか、そこが安全なお産への分岐点なのです。
「先生、もう耐えられません。促進剤使ってください!」や「帝王切開してください!!」と、懇願されるケースもありますが、赤ちゃんやママの体が危険でない限り、なだめてなだめてお産にもっていくのが私たちの仕事でもあります。
ゆっくり進むお産の原因として、赤ちゃんが子宮の中でへその緒を巻いていたり、へその緒を踏みそうになっている場合があります。
このような場合は、巻いたへその緒がそれ以上強く巻かないように、踏んでいたへその緒からうまく離れるように、赤ちゃん自身が陣痛を弱めることがあるのです。
陣痛は赤ちゃんの意志で強弱をつけられるので、産まれるための良い条件がそろわないときは、あえて陣痛を弱めてチャンスが来るのを待つわけです。
そんな時に焦って促進剤を使えば、かえって逆効果。
巻いたへその緒がさらに赤ちゃんを苦しめることになり、心音が下がります。
結果として赤ちゃんが危険な状態になり、緊急帝王切開に・・・。
本末転倒ですね。
焦って促進剤さえ使用しなければ、心音も下がらず帝王切開せずに済んだわけです。
急がば回れです。
赤ちゃんはとても賢いのです。条件が悪い時はわざと陣痛を弱めてゆっくりお産を進ませる。
結果として時間はかかりますが、安全なお産になります。
赤ちゃんがじっくり待っているのですから、お母さんもご家族の方も待ちましょう。
亀さんのようにゆっくり時間をかけて進むお産は、難産ではありますが安全なお産です。
いい難産とは、赤ちゃんファーストな安全なお産のことなのです。