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石川県白山市の女性産婦人科医 いこまともみ です。
好評のお産の歴史シリーズ、今回は江戸時代のお産についてお話しします。
書籍『お産の歴史』から内容の一部をご紹介します。
~江戸時代のお産の教科書『いなご草』より~
そろそろ生まれるころになって腹が少し痛んだとしても少しも慌てる必要はない。
気を落ち着けて陣痛か冷えによる痛みか食あたりか、よく考えたうえで医者と産婆を呼んで、容態を伝えること。
すぐには薬を用いず、しばらくは痛みを我慢するのが肝要である。
あまり痛まぬうちにお産が終わってしまうこともあるが、大体は異常に痛み、目がくらんで人の顔の区別もできないほどになって、これほどまでに痛みを我慢しなくては子を産むことができないのかと覚悟して、なんとか我慢するうちに、さほどいきむことなく楽々と産まれるものである。
痛みでもがき苦しむと、周囲の人は驚いて身体に合わない薬を飲ませたり、産婆に腹をもませたりするが、かえって不具合となって難産となってしまう。
また、その時期ではないのに陣痛促進剤を使って無理にいきませたりすると、逆子や横位になってしまうことがある。
あれこれ手を出しすぎて難産にさせてしまうとおうものである。慎まなければならない。
つつましい婦人はお腹の痛みが強くても侍女やお手伝いにも告げないでこの痛みで死ぬなら仕方がないと観念して静かにしているうちに、お産もすすんでいとも簡単にお産できるものである。
このように陣痛に対する心構えが書かれています。現代のお産に通じるものがありますね。
また、江戸時代に陣痛促進剤があったことに驚かされます。ちなみに当時は漢方薬が使用されていました。
陣痛促進剤を安易に使ってしまうのは、むしろ良くないということは現在でも同じです。
このことが既に江戸時代のお産の教科書に書かれていたのです。
先人が残した教えには学ぶところがたくさんあります。
私も一産婦人科医として、これからのお産の未来に貢献したいと決意を新たにしました。